飲食店を経営するうえで欠かせないのが「コンセプト」です。
コンセプトはお店全体の設計図のようなもので
- ターゲット
- メニュー内容や価格
- 内装と外装
- 販促方法
など、すべての基準になってきます。
メニューなどは後からでも変更できますが内装や外装は変えるのは難しく、費用がかかる場合も多いので、開業前にしっかりと方向性を固めておくことが理想です。

開業後でも「コンセプトの見直し」は十分可能ですが、工夫は必要です
そこで今回はコンセプトの
- 重要性
- 決め方と注意点
- 失敗しないポイント
について、例題を交えてわかりやすく解説していきます。
コンセプトがしっかりしていると開業までスムーズになり、経営の難易度も下がります。
飲食店の開業で失敗したくない方は最後までご覧ください。
- 飲食店を開業したい
- 開業を決意したけど何からすればいいかわからない
- コンセプトの決め方がわからない
飲食店開業におけるコンセプトの重要性とは?成功のカギを解説

飲食店経営において、コンセプトはお店の方向性を決める「軸」です。
ここが曖昧なまま開業を進めてしまうと、経営のさまざまな場面で迷いが生じ、結果的にお客様にも伝わりにくいお店になってしまいます。
どのような支障がでるか具体的に確認してみましょう。
ターゲットがぼやけて集客が難しくなる
飲食店を開業するためには
•お店の場所
•客層
•料理の価格・ボリューム
•内装や外観
といった、様々なことを考えなければいけません。
もし初めにコンセプトを決めてないと
- お昼休みにくるサラリーマンがターゲット
- 時間のかかる高価格帯の料理
という風にズレが生じてしまいます。
ターゲットが曖昧だと客層の幅が広くなってしまうので、どのお客さんにも強く刺さらないお店になることも。

その結果、満足度やリピート率が下がり集客にも苦労します
どのようなお客さんに来てもらいたいのか?から考えていき、メニューや内装を決めていきましょう。
メニューや価格設定に一貫性がない
コンセプトが曖昧なまま商品を決めると
- 方向性の違うメニューが混ざる
- 価格帯にも統一感がなくなる
- 原価管理やオペレーションも複雑化する
というように、お客さんにとって何をウリにしているお店なのかがわかりにくくなります。

また店側の視点でも、系統の違うメニューが乱立することで原価やオペレーションが複雑化してしまします。

メニューに統一感をだすのはお客さん、お店どちらからも必要ですね
広告・販促の打ち出しがチグハグになる
コンセプトが定まっていないとターゲットがあやふやになるので、広告や販促にも影響がでます。
10代に有効なSNSはTikTokやInstagramですが、60代ならFacebookや地域のフリーペーパーが反応はよかったりします

SNSや広告は、どのような層に届けるかを事前に決めておかないといい結果につながりません。
反対にコンセプトやターゲットが明確なほど刺さりやすい販促ができるので、集客面でかなり有利。
飲食店開業が失敗するほとんどの理由が集客できなかったことを考えると、コンセプトを固めておくのがいかに重要なことだかわかりますね。
飲食店開業のためのコンセプトの決め方例

例えばあなたが「隠れ家的な居酒屋」で開業したいとします。
すると出店する場所の候補としてあまり人目につかない裏通りの店舗となりますよね。

これだけで場所の候補がかなり絞れたことになります
さらに客層を考えていくと、若い方よりどちらかというと年配の方が多くなりそうと予測できます。
そうなってくると料理は
- 味付けはどちらかというと薄味
- ボリュームより質にこだわった方が良さそう
このように考えることができます。
内装は落ち着いた雰囲気の作りで外観もあまり目立たなく、通常の家と変わらないようにしてもいいでしょう。

コンセプトが決まるだけで色々なことが明確になってきますね
場所が先でそこからコンセプトを考えるのもアリ
コンセプトが決めてからメニューなどを考えるとお伝えしましたが、開業する時期によっては店舗が先に見つかるときもありますが、そのようなときは後からコンセプトを決めていくようになります。
店舗を探し出したタイミングでたまたま大学近くの店舗が空いた
この場合ターゲットは間違いなく大学生になるので
- 価格は抑えて
- ボリュームは必要
という風に考えなければいけません。
もしあなたが先ほど例にあげたような「隠れ家的な居酒屋」を出店したいと思って場所を探していたとしても、大学近くの店舗に決めたのであればメニューなどを見直す必要があります。

大学近くなので「居酒屋」のニーズはありますが「隠れ家的」なのは若干ターゲットが変わります。
初めからコンセプトを考えておくとお店に統一感がでる。
特に内装は工事をした後では変更しにくいのでしっかり考えを固めておくこと。
飲食店のコンセプトが集客に与える影響とは?集客力アップの秘訣

コンセプトがしっかりしていると集客にもプラスに働きます。
それはお客さんにどのようなお店かが分かりやすいからです。
反対にコンセプトがぼやけていると、何のお店かが分かりにくく、お客さんも入りにくいです。

極端な例を挙げると、店名は中華っぽいのにイタリアの国旗を店外に置き、和食を提供していたら来店に躊躇しますよね
反対に上記の
- 内装は落ち着いた雰囲気
- 価格は安くはないが質は高く
- 知らない方では見落としてしまいそうな立地にある「隠れ家的な居酒屋」
だとコンセプトに統一感があるので、自分だけ知っている落ち着いてお酒を楽しめる場所を探しているお客さんには支持されるでしょう。

結果、集客にプラスですよね
コンセプトをしっかり固めておくと、それだけで経営はしやすいのでじっくり時間をかけて考えるのがいいでしょう。
飲食店コンセプトを決める際の注意点と失敗しないためのポイント

コンセプトを決めるときはあなたがどのようなお店にしたいかをまずは考え、矛盾のないように掘り下げていくといいでしょう。
そこで役に立つのが5W1Hです。
飲食店のコンセプトに役立つ5W1Hとは?詳細な解説
- when いつ
- where どこで
- who 誰に
- what 何を
- why なぜ
- how どのように
の頭文字をとった言葉です。
これらを1つずつ考えていきましょう。
when コンセプトと営業時間
まずは営業時間です。
営業時間はお店によって変わってきますが、多いのは
- お昼と夜
- お昼だけ
- 夜だけ
- 夕方~深夜まで
このようなところでしょう。
営業時間も先ほどの「隠れ家的な居酒屋」で考えると夜だけ、もしくは深夜までが良さそうですよね。
where 立地とコンセプトの関係を理解しよう
これは場所です。
繁華街にするのか、郊外がいいのか。
どちらもいい面と悪い面があるので、あなたのお店にあった場所を選びましょう。
who ターゲット顧客を明確にする重要性
誰に向けてのお店なのかを考えましょう。
要するにターゲットですね。
•サラリーマン
•女性
•学生
•ファミリー層
等があります。
上記の複数が当てはまることもありますが、基本的に各層で求めているものは違うので、来店が多く見込める層を意識して考えましょう。
what コンセプトから考えるメニュー内容
ターゲットが決まると次は何を提供するのか?です。
•ボリューム満点のセット
•仕入れ先にもこだわったオーガニック野菜
•他のお店にはない少し変わった創作料理
この項目は他のお店と差別化できると安定した集客が見込めるでしょう。
why なぜそのような飲食店を開業するのか?
なぜそのお店をするのかです。
「隠れ家的な居酒屋」だと、あえてあまり目立たなくしていることで新規のお客さんを減らすことに繋がるでしょう。
しかし常連のお客さんは多いはずです。
常連さんとの会話をあなた自身が楽しみたい、といった想いがあれば「隠れ家的な居酒屋」を開業する理由として合っていますよね。
この「なぜ」の部分は開業において重要です。
how コンセプトを実現するための空間作り
最後はどのように提供するか?です。
これは料理や空間を表しています。
- オシャレな内装
- 照明は全体的に暗め
このようなイメージです。

それなら個室もあったほうがいいんじゃない?
確かに「隠れ家的な居酒屋」であれば個室があったほうがいいでしょう。
ただ今回は、
「お客さんとの会話をあなた自身が楽しみたい」
という想いから開業を考えている設定なので個室よりカウンターの方が目的に合っています。
このように「隠れ家的な居酒屋」といってもあなたが何をしたいか?によってお店作りは変わってくるのでしっかり考えましょう。
コンセプト例まとめ
先ほどから例になっている「隠れ家的な居酒屋」をまとめてみました。
- 18時〜24時まで 定休日は日曜
- 繁華街の裏通り
- 40歳〜60歳位がメインのターゲット
- 値段は安くはないが質は高い
- お客さんとの会話を自分自身が楽しみたい
- 全体的に暗く、オシャレな内装
- 個室はなし
これなら特に矛盾なくコンセプトが決まっています。
もし自分でわからなくなれば、数人で意見を出し合ってもいいですね。
コンセプトがブレたときの見直し方・修正方法
開業後コンセプト通りに運営していても、実際の営業では
- 思ったよりお客様の反応が違った
- ターゲット層のニーズに合っていない
というように想定とズレることはよくあり、その場合コンセプトの見直しが必要になります。
そこで次のパートではメニューや価格、営業時間といった調整しやすい部分を中心に、どのように軸を守りながら修正していくかを具体例を交えて解説します。
開業した後でコンセプトについて迷っている方は参考にしてください。
メニューや営業時間は柔軟に調整できる
コンセプトの見直しで重要なのは軸がブレないこと。
非日常な雰囲気が味わえる高級中華がコンセプトの場合
- 営業時間、メニュー内容の変更はOK
- BGMがアップテンポな曲に変更するのはNG
このようになります。

BGMの変更は「落ち着いて食事する」といったコンセプトから外れるからですね
反対に営業時間の変更は特にコンセプトがブレていません。
開業前から考えていた通りに経営できるといいですが、そうならない場合がほとんどなので状況に応じて柔軟な対応は必要です。

僕のお店でも想定以上にお客さんの引きが早かったので、閉店時間を30分早めました
はじめにコンセプトを作りこむのは重要ですが、来てくれているお客さんに合っているか?を常に気に「軸を保ちながら微調整していく」のが長く愛されるお店になるポイントでしょう。
実体験!想定と違う客層 から方向性の修正で売り上げUP
僕のお店では開業前
- ランチは近くのサラリーマンがターゲット
- ディナーは駅近の立地を活かしお酒を飲んでもらう
このような想定をしてましたが、ディナーでも思った以上にお酒は頼まれずに料理を楽しんでいる方がほとんど。
「料理がよく出るならセットメニューがあったほうがいいかも」
と思ったので、セットメニューを導入しました。

結果、売り上げアップにつながり今の営業スタイルが定着しています
コンセプトの軸さえぶらさなければ、柔軟な軌道修正は強みです。
何かを変えるときにコンセプトの軸はブレていないかを考えるといいですね。
実際に優れたコンセプトを持つ飲食店の事例紹介
コンセプトの決めかたも理解できたところで個人的に「いいなぁ」と思ったお店を紹介していきます。
ルイーダの酒場 思わず行きたくなるユニークなコンセプト
もしかすると名前を聞いてピン!っときたかたもいるかもしれません。
ルイーダの酒場は有名なゲームの「ドラゴンクエスト」にでてくるお店ですが、その世界観を表現しています。
- 料理
- ドリンク
- 内装
などコンセプトがしっかりしているのでドラクエファンならず、一般の方でも思わず声が出てしまうぐらい楽しいお店でしょう。
ビールスタンド重富 こだわりが感じられる魅力的なコンセプト
ビールスタンド重富はビールにこだわったお店です。
銘柄は1種類だけですが
- 1度つぎ
- 2度つぎ
- シャープつぎ
といった注ぎ方を変えることで味に変化をつけています。
ビールを美味しく味わえるように
- ビールサーバーのメンテナンス
- グラスの洗浄
- ビールの品質管理
にも余念がありません。
行列ができるほどの人気店ですが、「周辺店舗でも食事を楽しんでもらいたい」という店主の思いからビールはひとり二杯までとなっています。
コンセプトがしっかりしているからこそ、開業して10年以上すぎた今でも人気があるのかもしれませんね。
幻想の国のアリス まるでテーマパークのような飲食店
幻想の国のアリスは名前からもわかるように、「不思議の国のアリス」をモチーフにしています。
不思議の国のアリスの世界観をベースに、物語にでてくるキャラクターをちりばめていたり電飾やCGを取り入れているのでテーマパークのような異空間になっています。

上記のお店のようにコンセプトがしっかりしているとお客さんにもわかりやすいですね
飲食店開業成功のカギはコンセプトにあり!時間をかけて練り上げよう
今回は飲食店のコンセプトについて
- 重要性
- 決め方
- 修正方法と考え方
といったことを解説してきました。
もしコンセプトを決めておかないと
- お店全体のまとまりが欠ける
- 期待どおりの集客ができない可能性
- 内装など後からでは変更しにくい箇所もある
このようなデメリットがあるので、開業前にしっかり固めておくのが理想です。
ただし開業前に決めた方法にこだわるのではなく、営業していく中でお客さんの反応を見ながら柔軟に対応してくのが重要。
変更するときに大切なのは軸がブレないこと。

コンセプトを守りつつも柔軟に変更する姿勢は、お客さんの満足度を高めるので人気店につながるでしょう。
難しいとされる飲食店を成功させたいなら「どのようなお店にしたいか?」をじっくり考え、コンセプトを守りつつ臨機応変に対応していくといいですね。
ではでは。

