「もっと従業員を増やさないとお店がまわらない」
「今の人数で営業するのは負担が大きい…」
開業して忙しさが安定してくるとアルバイトを雇うことを考えるはずです。
アルバイトを雇うことで確かに今より負担は軽くなり、売り上げを伸ばすチャンスもありますが、その一方で、求人や人材育成には見えにくいデメリットも存在します。
そこで今回は「アルバイトを雇うことの落とし穴」について解説していきます。

僕も開業してしばらくはアルバイトを雇っていましたが、総合的に考えた結果、今は妻とふたりで営業していて今後雇う気もありません。
「アルバイトを雇って売り上げは伸びたけど、なんだかうまくいってない気がする…」
そんなふうにモヤモヤを抱えている方はぜひ最後までご覧ください。
アルバイト雇うを前に知っておきたい7つの落とし穴
早速アルバイトを雇うことのデメリットについて解説していきます。
どれも意外と意識していない方が多いデメリットなので、この機会にぜひ抑えておいてください。
アルバイトを雇うのにかかる費用と手間
アルバイト雇うためには思った以上に手間と費用がかかることに気づいていますか?
- 応募条件の記載
- 求職者とのやりとり
- 面接をしている時間
というように、採用までのステップだけでもかなりの労力が必要です。
採用後も
- 指導に時間をとられる
- 慣れていないためのミス
- 制服の準備
といった、見えにくい負担もあります。
今では無料で使える求人サイトもありますが、制服の準備や教育にかかる時間・ミスのリスクも費用がかかっていると考えるべきです。

人手不足を解消するには手間と費用がかかっていることを認識しておきましょう
採用してもすぐ辞めるリスク
飲食店では求人を出してもなかなか応募がこないことも多く、やっと採用できたと思っても数日〜数週間で辞めてしまうのは珍しくありません。
最悪の場合
「求人 → 採用 → 退職 → 再び募集をかけることに…」
というループを繰り返すことになり、負担を減らしたかったはずがかえってストレスと出費ばかりが増える…という結果もありえます。

面接の工夫や経験を積むことで定着しやすい人を見極める力はついてきますが、それでも「人が辞めるリスク」そのものはゼロにはなりません。
本当に今はアルバイトを雇うタイミングなのか?
一度立ち止まってゆっくり見直してみる価値はあるかもしれませんね。
新人教育に時間がかかる
採用後は作業を教えていきますが、安心して任せれるようになるには一定の期間が必要です。
採用された方が経験者であれば短期間で戦力になってくれますが、働くのが初めてだと作業を覚えるのも時間がかかるでしょう。

覚えるまでの間はあなたが教えるようになるので、仕込みや事務作業の時間も削られてしまいます。
作業をひと通り覚えてくれたときからあなたの負担は軽減されていきますが、そうなるまでには意外と時間が必要ですね。
教えても定着しない繰り返しのループ
新人スタッフに一から丁寧に教えても、結局数日で辞めてしまう…。
そんな経験をすると「また一からか…」と教える側のモチベーションも下がりますよね。
結果的に
- 教えるのが雑になる
- お店の雰囲気が冷たくなる
- 新人がますます辞めやすくなる
という負のスパイラルに陥ることもあります。

教え方がどこかそっけないと、「このお店で頑張りたい!」とはならないですよね
応募が来たとしても定着して戦力になるまでは時間がかかる、といった点はアルバイトを雇う前にしっかり理解しておきましょう。
労災や保険対応の義務
アルバイトを雇うと業務中のケガや通勤中の事故などに備えて「労災保険」に加入する必要があり、一定の条件を満たせば、「雇用保険」や「社会保険」への加入も義務となります。
これらの保険は従業員を守るための制度ではありますが、手続きや管理には手間がかかり事業者側の負担も無視できません。

僕は開業するまで保険の手続きをしなかったので、かなり面倒に感じました
特に労災保険は保険料自体はそれほど高くないものの、事務手続きが意外と面倒で
- 書類の準備
- 労基署への報告
など、慣れていないと時間も精神的な負担も大きくなります。
もちろん「必要な義務」ではありますが、求人を出す=採用して終わりではないという点を、あらかじめ理解しておきましょう。
人件費が上がるうえ、簡単には辞めさせられない現実
最低賃金の引き上げやの影響で、人件費の負担は年々増加していて「売り上げはそこそこあるのに、利益が全然残らない…」という声も少なくありません。
また
- ちょっと合わないな…
- 勤務態度があまりよくない…
と思っても、正当な理由がない限り簡単に解雇はできないのが現実で、対応を誤ればトラブルに発展するリスクもあります。

求人をかけるなら、長期的に雇用しすることになっても問題ないか?といったことも考えておきましょう。
売り上げが伸びても心の余裕が失われる場合もある
求人が成功し、いい人材が採用できた結果、今までより売り上げを伸ばせることはあります。
ただし売り上げが伸びれば、それだけお客さんが増えるということ。
特に飲食店では
- 仕込みの量が増える
- 買い出しの回数が増える
- 営業中も慌ただしくなる
といった形で、作業量が大きく膨らみます。
自分の時間が減った状態が続くと
- リフレッシュできず疲れが取れない
- 家族との時間が減り関係がすれ違う
- 気づかないうちにストレスが溜まり、イライラしやすくなる
というように、精神的にかなりの負担になることも。

僕も忙しさからほぼ休憩がとれなかったときは、仕事が嫌になったこともあります
もちろん売り上げが増えて収入に直結することで、達成感ややりがいを感じられる人もいるかもしれませんが、「売り上げは高ければ高いほどいい」という考えは間違っている恐れもあります。
収入が増えても心のゆとりがなくなってしまっては本末転倒なので、売り上げと自分の余裕のバランスをどう取るかも、経営を続けていくうえでとても大切な視点ですね。
こちらの記事も参考にしてください。▷【警告】個人事業主が休みなしで働いてはいけない4つの理由と休むコツを解説
お金より大事なものは、失ってからでは遅い
今まで働いてきた会社なら、まず売り上げを伸ばすことを考えてきたはずです。
その考えが染みついているので、自分のお店ではなおさらがむしゃらに働こうとするでしょう。
「売り上げをとにかく伸ばしたい」なら、人手がほしいから求人をかけるといった選択は間違っていません。
しかし売り上げを伸ばすために頑張った結果
- 忙しさから疲弊しきっている
- 子どもとはすれ違いの生活になり、さみしい思いをさせている
- パートナーとは仕事の話しかしていない
といった状態になっていませんか?仕事ばかりの現状に満足しているでしょうか?
僕も開業してしばらくは「将来のためには今頑張らないと!」休みは月に2、3回しかとらずに仕事ばかりしていました。

アルバイトも雇って、売り上げばかりを気にし、子どもが熱を出しても仕事をしていました。
忙しい日の営業終了後に売り上げが高ければ、「よしっ!」となっていましたが、そのうらでは子どもたちが犠牲に…。
「これではダメだ」
と気づいてから、思い切って日曜日を定休日にしましたが、売り上げは落ちても心の豊かさは感じれています。そのことについて詳しく知りたい方はこちらにまとめています
▷【子育て世帯必見】99%の方が知らない飲食店の定休日に日曜日がオススメな理由
「売り上げがすべてじゃない」のは頭ではわかっていても、現場で毎日働いているとつい忘れてしまいますよね。
でも本当に大切なものを犠牲にしてまで手に入れた売り上げは、果たして幸せにつながっているでしょうか?
一度ゆっくり考えみるといいですね。
筆者が実践した!アルバイトを雇ってもうまくいく4つの工夫
これまでアルバイトを雇う際のデメリットについてお話ししましたが、一方でうまくいっている方もいらっしゃいます。
ここで紹介する4つの工夫は、実際に僕が取り入れてきた方法です。

おかげでアルバイトは卒業まで続けてくれ、卒業後も定期的にお店に食べに来てくれるほど良い関係を築けています。
ぜひ参考にしてください。
小さな成長を見逃さず「ほめる」
求人による手間や金銭的負担を減らすには、採用した方に長く続けてもらうことが何より大切です。
そのためには日々の関わり方が重要になりますが、基本は「ほめる」こと。


小さな成長でも見逃さずにほめることで、本人のやる気や自信が育ち、仕事への前向きな気持ちにつながります。
逆にミスを叱ってばかりいると萎縮してパフォーマンスが落ちる原因になるので、良いところを見つけて声をかけるよう意識しましょう。
採用の基準は下げない
求人を出してもなかなか応募が来ないと
「この人を逃したら、次はいつになるかわからない…」
と思ったことはないでしょうか?
焦った結果
- お店の雰囲気に合わない
- すぐに辞めてしまう
といった方まで採用してしまい、「結局また求人からやり直し」というつらいループにはまってしまうことも。
合わない方を無理に育てるより合う方を見つかるまで待つほうが、長い目で見るとずっとラクになります。
どれだけ時間がかかっても採用の基準は下げないことが、お店のためになるでしょう。
高時給よりも「働きやすさ」で選ばれるお店
応募が来ないことを理由に時給を高く設定するお店もありますが、その場合時給だけで選んでいる人が多く、いい人材にはつながりにくい傾向があります。
実際、アルバイトが辞める理由の1位は「人間関係」であり、時給はそれほど大きな要因ではありません。▷参考https://en-gage.net/user/content/know/reason-for-quitting-part-time-job/
特に個人店なら時給を高く設定してしまうと、アルバイトを雇わないほうが利益が残るといったことにもつながります。
もしかすると

時給が高くないと応募がないかも…
と考えるかもしれませんが、工夫すれば大丈夫です!
- まかない、誕生日の月は通常より豪華に
- 余った料理をテイクアウトOK
- 飲食に来てくれたらドリンクやデザート無料で提供

これらは時給を上げるよりも負担は一時的でアルバイトの喜びも大きく、自然と「ここで働きたい!」という気持ちにつながります。
「応募が来ない=時給を上げよう」と短絡的に考えるよりも
- 働きやすさ
- 働きたいと思える工夫
を考えると、結果的にいい人材が集まりやすいでしょう。
ちょっとした雑談が信頼関係をつくる
あなたは仕事中にアルバイトと雑談をしていますか?
「雑談なんて、真面目に働いていないように見える…」と思う方もいるかもしれませんが、実はこの“ちょっとした会話”が、関係性を深める大きなカギになります。

アルバイトは少なからず緊張して働いているので、軽い会話があると気持ちがほぐれ、安心感をもって仕事ができるようになります
雑談から生まれる信頼関係が、結果としてお店の雰囲気をやわらかくし、定着率にもつながっていくでしょう。
アルバイト不要⁉ 夫婦だけで回すための工夫
アルバイトを雇うのは簡単なことではない、ということは理解できたけど、現実的に考えると人手が足りない…
といった方のために代替案を用意しました。
求人をかける前に試してみてもいいでしょう。
ので見ていきましょう。
営業時間を見直してみる
もしもアルバイトを雇う理由が、売り上げを伸ばすより負担を減らしたいなら営業時間を見直してみましょう。
特に飲食店なら、オープンからクローズまでずっと忙しいお店は少ないはずなので
- オープンを30分遅くする
- クローズを30分早める
というように、営業時間を少なくしても売り上げにはほとんど影響がないことも珍しくありません。

僕も開業して3年ほどでクローズを30分早めましたが、売り上げにはほとんど影響してません
そのほかにも
- ランチ営業だけにする
- 定休日を増やす
- 夜営業を金土のみにする
などもいいでしょう。

お客さんが少ない時間は、思い切って営業しないほうが利益率がよくなる可能性もあるので検討してみましょう。
「利益」について詳しく考え方を知りたいならこちらの記事を参考にしてください▷『要注意!』売り上げと利益の違い
作業時間の見直して休める時間をつくる
あなたのお店では作業の最適化はできていますか?
開業して慣れてくると、思考停止してしまい作業時間の見直しはしないことが多いですが、短縮されると休める時間が増え精神的な余裕にもなります。
たとえば飲食店でよくあるのが、少しでも原価を抑えようとして、最安値の店を求めて買い出しに回ること。

僕も開業当初は安さを求めて複数のお店に買い出ししてましたが、負担を減らすために今は「自店からの近さ」で選んでます
原価率の管理は大切ですが、数字だけを追いかけて負担を増やしてしまっては本末転倒。
原価について詳しく知りたい方はこちら▷飲食店にとって原価率が重要な理由を解説
アルバイトを雇うだけが負担を減らす方法ではない、ことにも目を向けましょう。
テイクアウトやセルフ方式を取り入れる
お店だけで売り上げを伸ばそうとするとどうしても人手が足りなくなりますが、テイクアウトは
- 「予約」が多いためスタッフが少なくても対応しやすい
- お客さんに浸透してくると、売り上げの最大化も狙える
といったメリットがあり、年収アップの可能性もあります。
またお冷やおしぼりなどをお客さん自身に用意してもらう、セルフサービスも検討してみましょう。

セルフサービス導入に抵抗があるかもしれませんが、「合理的でいい」とおっしゃるお客さんが大半です。
「全てをスタッフがやる」のが当たり前、という考えを手放すことで、無理なく運営を続けられる仕組みができるでしょう。
人を増やすより負担を減らす。夫婦経営に合う働き方を見つけよう

今回は人手不足や負担軽減からアルバイトを雇うことを検討しているあなたに、アルバイトを雇うことの落とし穴について解説してきました。
いいアルバイトが雇えれば
- 負担が減る
- 仕事を覚えるのが早い
- お店の雰囲気がよくなる
- アルバイト経由で新しいお客さんが増えることも
というようにプラス面も間違いなくありますが、求人から採用、そして育てていくまでにかなりの労力がかかることを忘れてはいけません。

僕はトータルで考えてアルバイトを雇うことを辞めました
忙しくて回らないからアルバイトを雇う、という選択も間違ってはいません。
しかし売り上げを追い求めた結果
- 自分たちは疲弊して余裕がない
- 子どもとの時間を犠牲にしている
となっていては本末転倒ですよね。
飲食店経営の先輩たちは
「子どもが知らないうちに大きくなっていた」
「日曜日に家族で出かけたことはほとんどない」
と、よくいってます。
あなたは売り上げを求めて仕事ばかりでも後悔しないのか、ゆっくり考えて自分たちに合った経営をしていきましょう。
ではでは。